【注意】 『ワンダーウーマン 』『ワンダーウーマン 1984 』のネタバレを含みます。
「美術と観るワンダーウーマン (前編)」 では、映画に関連する絵画作品などを紹介しました。
su9ar.hatenablog.com
今回は、プロダクションデザイン* という意味での美術 (+衣装)を取り上げ
前回の記事で紹介した絵画の楽しみ方のような視点で『ワンダーウーマン 1984 』(以下『WW84』)を中心に、劇中に登場する アイテム・衣装・人物に何らかの意味が込められていたら? と仮定しながら、私なりに各キャラク ターと映画を掘り下げていきます。
* プロダクションデザインとは、建築物・大道具・小道具・装飾などを担う、映画の世界観を表現するのには欠かせない部門。
この後編では、キリスト教 やギリシャ 神話、ローマ神話 を度々交えながら考察を記述しています。
これらは西洋に暮らす人のアイデンティティ ー形成や、様々な作品や文化に影響を与える要素でもあります。
うんちくや話のネタだと思って、軽い気持ちで読んで頂ければ幸いです。
CONTENTS
プロダクションデザイナー
本題に入る前に、『WW84』 の美術部門を統括するプロダクションデザイナーのアリーヌ・ボネット 氏について紹介します。
《アリーヌ・ボネット》 フランス出身のプロダクションデザイナー。 『アメリ 』をはじめ、ジャン=ピエール・ジュネ 作品に多く携わる。 パティ・ジェンキンス 監督は、彼女のことを観察眼が鋭く、創造性豊かで細部まで手を抜かないと評している。
”土台や建築物などの大きいものをしっかりと完成させ、色を塗り、装飾を施して、色々な過程を踏んでこそようやく理想のセットは完成する。そこに照明や衣装を纏った役者が加わることで奇跡の瞬間が訪れる。”
(アリーヌ・ボネット、『ワンダーウーマン 』特典映像より引用)
過去の参加作品の面影
ボネット氏がセット装飾で参加した『ロストチルドレン』 という作品があります。
この映画には、一際存在感を放つクローン人間たちの実験室 が登場します。
『ロストチルドレン』(1995)©UGC
このセットの風合いと並べられた数々のモノが醸し出す独特の不気味さやは、マル博士の毒ガス研究所に通じます。
セットのこだわりへの証言
マル博士の研究所のセットで撮影をしたクリス・パイン やダニー・ヒューストン によると、撮影をしないはずのセットの隅にまでドイツ語で書かれたメモが置かれていたり、誰も見ないような引き出しの中にまで小物が準備されていたそうです。
細部までしっかりと作り込まれたセットは、役者が役に入り込む際の手助けになったり、様々なアドリブにも対応するためにも重要ではありますが、ここまで世界観を徹底的に作り出すボネット氏や美術スタッフの根気には脱帽します。
他にも、『ワンダーウーマン 』 では、ボネット氏の過去の参加作品の片鱗を感じることができます。
『ロングエンゲージメント 』(2004) ©Warner Bros.
1918年の雰囲気や無人 地帯の塹壕 は、彼女がセザール賞 最優秀美術デザイン賞 を受賞した『ロングエンゲージメント 』 で培ったノウハウと技術が応用されているように思えます。
ボネット氏と美術チームの情熱と仕事ぶりが特に分かる例として、『WW84』冒頭のショッピングモール が挙げられます。
Landmark Mall, Alexandria VA ©Warner Bros. / DC Comics, Inc.
2017年に閉館された商業施設を利用して作られたモール
あらゆる資料を参照しながら、緻密にデザインを練り、各店舗のジャンルに見合った当時の商品を陳列することで、見事に完成した80年代のモールですが、ボネット氏が手掛けた店舗数はなんと65店舗(合計3フロア分) にも及びます。
モールのあまりの出来に、監督・撮影クルー・演者も撮影の合間に施設内を散策し、各自の思い出の詰まった商品などを見つけては、タイムスリップした気分を味わっていたそうです。
美術の役割
実際のものにしか出せないリアルがあると考え、手作業の工程や、美術の力を信頼するジェンキンス 監督の並々ならぬこだわりや、
アリーヌ・ボネット氏の言葉“私の仕事は美を作りだすのではなく、物語を細かい点まで自分なりに語ること ”(『ワンダーウーマン 』特典映像から引用) から察するに、劇中には、ふとしたシーンも、そこに写るものにも、何かしらの意味が潜んでいる気がします。
パティ・ジェンキンス 監督と撮影監督 ©Clay Enos / Warner Bros.
『ワンダーウーマン 』『WW84』の撮影は、部門の垣根を越えた小まめな情報共有の場が設けられ、スタッフ各自が積極的に作品づくりに臨める自由な環境だったそう。
『WW84』あらすじ
1918年、アマゾン族の王女 ダイアナはスティー ブ・トレバーと彼の仲間たちと協力し、大きな犠牲を払いながらも軍神アレスを倒す。
それから66年の月日が流れた1984 年、ダイアナはスミソニアン 博物館で学芸員 として勤務する傍ら密かに平和を守る活動をしていた。
ダイアナの同僚バーバラ・ミネルヴァの元に、強盗事件の鑑定依頼が飛び込み、物証として「代償と引き換えに持つ者の願いを叶える」という魔法の石ドリームストーンが送られてくる。
思いがけずドリームストーンに願い事をしたことをきっかけに、不思議な現象に見舞われるダイアナとバーバラ、そしてその石を狙う魔の手が忍び寄るのであった...
©Warner Bros. / DC Comics, Inc.
セッミシラに住む女性だけの部族、アマゾン族の王女。ヒッポリタと神ゼウスの子。
スティー ブ・トレバーとの出会いをきっかけに、第一次世界大戦 真っ只中だった人間の世界に足を踏み入れる。
不老不死(長寿?)のため、本作の舞台である80年代でも変わらぬ姿で生き続けている。
原作者の伝記映画でも言及されていたり、コミックでも通じる部分があることから、ワンダーウーマン には、ギリシャ 神話の女神アテナ の要素が少なからず盛り込まれていると考えられます。(コミックに同名のキャラク ターが存在するので、ややこしいですが)
『WW84』 の場合は特に、その影響を強く感じました。詳しくは、下記のアイテムやスティー ブ・トレバーの項目で述べたいと思います。
《アテナ》
ギリシャ 神話における戦い(正義、勇気)と知恵の女神。
鎧を身に纏った完全武装 の状態で父ゼウスの頭から飛び出してきたというびっくり誕生秘話を持つ。
絵画では勇ましく描かれることが多く、王族や為政者の肖像画 のモチーフとして人気があった。
レンブラント ・ファン・レイン 『パラス・アテナ』(1664年〜1665年)
グルベンキアン美術館所蔵
女神アテナは金色の鎧 を纏った姿で描写されることが多い。
戦闘で活躍したアイテム
『WW84』 のダイアナは、ドリームストーンでスティー ブを生き返らせた代償にパワーを失いました。
戦闘の場面では、弱体化した彼女の代わりに、お馴染みのアイテムたちが活躍します。
実はそれらには、武器以外の意味がある気がしたので、私なりの考察を紹介します。
《ヘスティア の縄》
『WW84』で大活躍したヘスティア の縄。
縄に捕らわれた相手に真実を吐かせたり、マインドコントロール を解く作用もある。また、ときとして真実を伝達する働きもする。
ヘスティア とはギリシャ 神話の炉の女神 です。
炉=囲炉裏は家の中心に位置し、生活に欠かせない重要なものであることから、
家庭 や家庭の延長として考えられる国(世界)を守護する女神 と称えられました。
孤児たちや困窮した人々の保護者でもあり、平穏を愛する優しい女神とされます。
ヘスティア は、人間の生活にとって欠かせない炉の火を絶やさないため、人間のそばを離れなかったと考えられます。
これがこの女神が、神話に頻繁に登場しない=ギリシャ 神話では目立たない神だとされる由縁でもあります。
© Clay Enos / Warner Bros. / DC Comics, Inc.
人間に寄り添い、人知れぬ状況で世界を守るダイアナは、女神ヘスティア と立場が重なる。
『WW84』 の劇中でヘスティア の縄は、人知を超えた力が備わったものだと言及されます。
争いごとから縁遠いヘスティア によって作られたと考えると、攻撃的な武器というよりも、人を守るためのもの だと考える方がしっくりきます。
そんな意味合いを含んでいそうなこの縄を、前作より各段に幅広いバリエーションで使いこなすダイアナの姿は、彼女が世界を守る者として、模索しながら成長していく様子を表しているようです。
《ティアラ》
星を模したこのティアラは、ダイアナのロールモデル である伯母アンティオペの形見。戦闘時はブーメランのように使用できる。
© Clay Enos / Warner Bros. / DC Comics, Inc.
自分を見失ってはいけない、嘘からは真の英雄は生まれない、とダイアナを律するアンティオペ
真実は、時として残酷で無慈悲でありながらも、必ずどこかに希望も帯同しているはずです。
それを見出して奮闘する者には「真実は味方になり得る」という真理、そして最強の戦士たるものは真実の番人であれ といわんばかりのアンティオペの思いがティアラには詰まっているのではないでしょうか。
◇アトリビュート の視点で見ると...
星のティアラ(冠)は、聖母マリア にとって重要なアイテムとされる。
これには、愛・喜び・平和・寛容・慈悲・善良・忍耐・柔和・誠実・慎み・節制・貞潔 という意味がある。
フランシスコ・デ・スルバラン『無原罪の御宿り』1630年~1635年 プラド美術館 所蔵
星のティアラを冠した聖母マリア
《ゴールドアーマー》
アマゾンの誇り高い戦士アステリアがアマゾン族をセミ ッシラへ逃す際に着用していた鎧。
アマゾン達の鎧を集めて作られたのがこのアーマー。
◇アトリビュート ・寓意の視点で見ると...
金色⇒世の光、神の色を象徴する。
鷲⇒勝利や再生、正義を表す。ゼウスの分身と信じられている。
アステカ文明 などでは、「鷲」はネコ科の動物と敵対すると考えれ、終盤のチータ ー戦にはうってつけの装備と言えます。(ちなみに、映画でのダイアナをはじめ、アマゾン族のアーマーは、アステカの民族衣装とアールデコ をモチーフとしています。)
© Clay Enos / Warner Bros. / DC Comics, Inc.
元はコミック「キングダムカム」でアレックス・ロス がデザインしたアーマーを基に実写化
世界を救うため、スティー ブに別れを告げたダイアナは、マックスを止めるためにゴールドアーマーを装備して飛び立ちます。
アマゾン達の鎧を集めて作られたこのアーマーを纏って出陣するということは、愛しい人や同胞・救いを求める人々の思いをダイアナが一身に背負っているとも受け取れ、
故郷で崇められていた英雄アステリアのように、もしくは神のように、ダイアナが希望の存在に進化したのだと思わせます。
ダイアナを象徴する動物
スミソニアン 博物館内でダイアナとバーバラが初対面するシーンで、どうしても私の興味を引くものがあります。
それは、ダイアナの後ろに佇む孔雀の剥製 です。
しかも動物の標本としてではなく、神物的なジャンルのひとつとして展示されているのです。
◇アトリビュート ・寓意の視点で見ると...
孔雀は神 の使い ・ 死んだ後も肉が腐らないと信じられたことから、不死のシンボル とされる。
それはキリストの復活の象徴でもあります。
ダイアナの不老不死(長寿?)という特徴・文明や技術が発達しても、相変わらず争いの絶えない人間の世界にとってのワ ンダーウーマンの存在意義の普遍性 を際立たせるポイントとして、この剥製が配置されているように思えました。
また、死者の復活を予兆するとされる孔雀の登場は、スティー ブが蘇ることを示唆 しているとも取れます。
ダイアナが担う役割
アクションやバトルを期待した人からすると、『WW84』 は少々物足りなかったかもしれません。
しかし、今回のストーリーは、武力で解決することが全てではない とするワンダーウーマン 本来のキャラク ターとしての立ち位置を再認識させ、彼女の大事な使命である「人間を守る」ということに立ち返っており、その面では評価に値すると思います。
© Clay Enos / Warner Bros. / DC Comics, Inc.
強盗と対峙した際もはじめは彼らを諭し、武力行使 は最終手段としていた
ワンダーウーマン は単にスーパーパワーがあるから強いのではなく、苦難にぶつかってもめげない精神・信じる心・他者にゆだねる勇気を持っているからこそ強いのだと改めて感じました。
スティー ブ・トレバー
元アメリ カ陸軍パイロ ットで、第一次世界大戦 ではイギリス軍諜報部でスパイとして活動。
毒ガスを積んだ飛行機の爆撃を防ぐため、自ら飛行機もろとも爆破し死亡した。
『WW84』では、ダイアナが人の願いを叶えるドリームストーンという石に「トレバーを生き返らせたい」と願った結果、彼の魂がとある男性に憑依することで復活する。
スティー ブを表すアイテム
《時計》
「苦境に面したときの行動で人間の真価は決まる」というスティー ブの父の教えを思い出させるアイテム。今作ではスティー ブの形見として登場する。
◇寓意の視点で見ると...
時計は節制を意味し、正しい道へ導くものとされる。
いつの時代も、ダイアナを正しい道に導く手助けをする善良な人間としてのスティー ブ。それを象徴するのがこの時計だと言えます。
(以前、セミ ッシラの泉で怪我を治癒していたスティー ブが、あなたは標準的な人間なのか? とダイアナに質問されます。この質問にスティー ブは「それ以上」と返答していました。これは状況的に笑いをとっているだけでなく、善人として標準以上なスティー ブの本質が、彼の意図せぬ形で表れた瞬間だと思います。)
《スニーカー》
80年代ファッションショーを繰り広げるコミカルなシーンで、トレバーのお気に入りアイテムとして取り上げられるナイキのスニーカー。
Nike Classic Cortez Premium QS®
トレバーが兵士として仕えたアメリ カ、そしてワンダーウーマン を象徴する色がデザインされたスニーカー
ご存じの方もいるでしょうが、
ナイキというブランドの名前は、ギリシャ 神話の女神ニーケー が由来になっています。
ニーケーは勝利を司る神で、アテナにとっては欠かせない随神 とされます。
オーストリア 国会議事堂前のアテナ像 ©Dennis Jarvis
勝利をもたらす守護天使 のようにアテナの右手に乗るニーケー
アテナ=ダイアナを正義へ導くニーケーであり、頼もしいパートナーとしてのスティー ブをこのスニーカーを通して強調しているのではないでしょうか。
動物と食べ物が意味すること
《魚》
自分の魂を宿した男性の自宅で、復活してからダイアナに再会するまでの経緯を説明するスティー ブ。
その後ろには魚の入った水槽がある。
英語にはlike a fish out of water というイディオムがあります。
直訳すると水から出た魚ですが、場にそぐわない人 という意味で使われます。
この状況のスティー ブはまるで、水槽から出てきた魚のようであり、この世にそぐわない存在だと示唆している ようです。
© Clay Enos / Warner Bros. / DC Comics, Inc.
スティー ブのこの世ならざる者という立場は、次に紹介する食べ物でも強調されている気がします。
《ポップターツ》
スティー ブがベッドで頬張っていた食べ物。
パンとクラッカーの中間のような歯応えのある生地に甘いフィリングが入っており、外側にもフロスティング がかかった、スナック兼アメリ カの朝食定番メニュー。
個人的にはシリアルと人気を二分している印象がある。(特に子供に人気)
Pop-Tarts®︎
種類は20以上にものぼる。
稀に「なぜ商品化したの?」と疑問を抱きたくなる風変わりな味も発売されている。
この食べ物の名前にあるタルト(tart) は、キリストの復活祭で食べられるメニューでもあります。
また、キリストが最後の晩餐で食したと伝えられるマッツァー (クラッカーのようなパン)と同じルーツを持っている食べ物でもあります。
見た目もポップターツに似ているマッツァー
この2つの意味を考慮すると、スティー ブが美味しそうにポップターツを食す描写は、彼自身が復活の喜びに浸っているようでもあり 、この世での最後の食事をしている ように見えます。
※ 魚やパンは、キリスト教 にまつわる要素であり、スティー ブの自己犠牲の精神を仄めかしているとも捉えられます。
『WW84』のスティー ブの立ち位置は前作から決まっていた?
Wonder Woman(2017) ©Warner Bros. / DC Comics, Inc.
ワンダーウーマン 達の後ろには、兵士に扮したザック・スナイダー やDC映画専属の写真家クレイ・イーノスが背後に映り込んでいる。
『バットマン vsスーパーマン 』 でワンダーウーマン の印象を強烈にしたこの写真は、第一次世界大戦 当時の技術である湿板写真を実際に用いて撮影されました。
被写体は、撮影の瞬間はしばらく動いてはいけないのですが、クリス・パイン が少し動いてしまった結果、彼が演じるスティー ブがぼんやりとした印象の写真が出来上がりました。
しかし、ジェンキンス 監督は、このブレて写っているスティー ブが霊のような雰囲気があってロマンティックであり、伝説の人物の様相が出ていて良い! としてこの写真を採用しました。
一作目の時点で、監督はトレバーに霊=守護霊的ポジションを担わせる意図があったのかもしれません。
永遠の存在、スティー ブ・トレバー
スティー ブは、すべての事象には必然性と意味があること、大切な誰かの思いや魂はいつもそばにいてくれること、そしてとんでもないこの世界でさえも素晴らしいのだ とダイアナに伝え、彼女を表層的な孤独から解放する重要な役割を担っていました。
(『ワンダーウーマン 』冒頭のナレーションを思い出してみると、スティー ブの意志は現在もダイアナに大事に受け継がれていることが伺えます。)
©Warner Bros. / DC Comics, Inc.
劇中で飛行機を見かけるたび、今までも、これからもスティー ブは大空から見守ってくれているだろうという想いが込み上げます。
◇余談◇
私の勝手な憶測ですが、ジェンキンス 監督は、戦闘中に亡くなってしまった自身の父(空軍パイロ ット)をスティー ブと重ねているのではないでしょうか。愛する人 を失う悲しみ、多大なる喪失感と葛藤は、ダイアナだけでなく監督自身も経験してきたのかもしれません。
ジェンキンス 監督は、この時期(7歳の頃)にリチャード・ドナー 監督の『スーパーマン 』 やリンダ・カーター演じるワンダーウーマン に夢中になっていたとインタビューで答えていたのを記憶しています。
計り知れない悲劇に見舞われたであろう幼い彼女を、これらの作品が少なからず癒していたのではないだろうか?ヒーローが現実にもたらす影響と力をこのとき知ったのではないだろうか?と考えてしまいます。
マックスウェル・ロード
テレビでお馴染みのビジネスマンとして世間では認知されている。
しかし、表向きの華やかさとは打って変わり、彼が経営する投資会社は殆ど破綻していて、出資者からは詐欺師扱いされる。
紆余曲折を経て、手に入れたドリームストーンに「石そのものになりたい」と願い、特殊な パワーを得たマックスは、 人々から願いを引き出しながらその対価として己の欲望を実現させていく。
マックスのモデル
マックスの衣装デザインは、『ウォール街 』 (1985年)のゴードン・ゲッコーが手本にされているそうです。
『ウォール街 』©️20th Century Fox 出世欲の強い若手証券マンのバド・フォックス(写真中央)が、大富豪ゴードン・ゲッコー(写真左)との出会いをきっかけに金融犯罪に手を染めていくサスペンス
マックスの見た目や振る舞い方は、「強欲は正しい」 と考え他者を利用しながら傲慢に生きるゲッコーに通じます。
しかし、”夢見がちで欲に翻弄されるも、最終的には家族の絆で目を覚ます”という共通点があることから、実際のマックスの中身はゲッコーに憧れるバド・フォックス に近いのではないでしょうか。
マックスを動かすもの
《ドリームストーン/シトリン》
触れた者の願いを一つ叶えるが、それと引き換えに、願い事をした人の大切なものを奪う力を持つ。
この石を作ったとされる神の中に、DCコミックス に登場する欺瞞の君主(Duke of Deception)やドロスの名前が挙がっている。
◇寓意の視点で見ると...
宝石は富の虚栄 とされる。
ドリームストーンの表向きの顔であるシトリン(商売繁盛、富、偽物を意味する)は、
“誠実・無垢”という意味を持つ、アメジスト や水晶などに人の手を加えることで出来上がります。この石が生まれる過程は、他者や世間の目という外的な価値観(人の手)に翻弄されてきたマックスの人生を彷彿させます。
シトリンを器に、邪悪な力を宿したドリームストーン。それと一体化したマックスは、過剰な欲と虚栄に蝕まれた不健全な思想の象徴とも言えます。
《羊》
ドリームストーンの力で暴走するにつれ、寂れていたマックスのオフィスの装飾は、どんどん華美で邪悪な様相になっていきます。
ただ、そんな状況でも、最初から変わらず置かれているものがありました。 それは羊の頭蓋骨です。
◇アトリビュート ・寓意の視点で見ると...
羊⇒受難、迷える人、生贄
骨⇒虚無
世界を支配しようと目論むマックスは、見方を変えれば、現代社 会の病的かつ尽きることのない欲に消費される生贄 でもあります。
幼少期の虐待や、移民という風当たりの強い境遇から生まれた自己顕示欲は、次第に歪みはじめ、とんでもない過ちを引き起こすことになりました。
しかし、本当の彼は助けを求める人 なのだと、羊の骨を見て確信しました。
(初めてこの骨が視界に入ったときは、ベタに「罪人」や「悪魔」の象徴である山羊のものだと思っていました。)
《アリスタ 》
マックス・ロードの愛する息子。
父の軌道に乗らないビジネスや、調子の良い嘘に薄々気づいてはいるが、それでも彼を慕い、いつも一緒に居たいと思っている。
世界を滅亡しかねなかったマックスが正気を取り戻すきっかけとなる存在。
© Clay Enos / Warner Bros. / DC Comics, Inc.
両親の離婚で、日々寂しい思いをしていそうなアリスタ
奇しくも、この少年の "アリスタ " という名前 は、ギリシャ 語の「人(男)を守るもの」 という意味を持つアレクサンドロス が英語化したものです。
欲に目が眩み、世界中の人を巻き込んで身を滅ぼす寸前だった父・マックスの目を覚まし、「どんな人にでも、愛して認めてくれる存在は居る」と気付かせてくれたアリスタ は、その名の由来の通りマックスにとってヒーローだと思います。
マックスの生い立ちと境遇から来る反動は、嘘の上塗りという処世術に形を変え、「力を誇示したい・人から必要とされたい」 という欲を膨らませていきます。
その表れとして、彼の偽名が挙げられます。
実は、マックスの本来の苗字は、ロレンザーノ だと明かされます。
これは映画独自の設定ですが、よりにもよってロード(Lord=神) という仰々しい名前を偽名に選ぶあたり、彼の病んだ自己顕示欲を如実に 示している例だと思いました。
人々から崇められる究極の存在である神 。
それになろうとするマックスの様子は、名前以外にも、渋滞を切り抜けるためタクシー運転手にモーセ の十戒 の真似事をさせたり、オフィスの装飾が禍々しい神殿風のデコレーション* に変化していたことからも窺えます。
©Warner Bros. / DC Comics, Inc.
マックスは、真実から目を逸らす人間の驕りと弱さを体現したキャラク ターではあったものの、
自分が幼少期に与えられなかった関心や愛を、自身の子であるアリスタ に注ごうとする姿勢からは、彼の本質にある善の部分や人間が持つ希望 を感じられました。
人間の嫌な部分を表現しつつ、何とも憎みきれない役を演じたペドロ・パスカル は見事なものです。
* 華美なオフィスのデコレーションについて
確認が十分では ないので、断言は出来ませんが、ドリームストーンが滅亡に追いやったとされる各文明(その亡骸)を匂わせるような置物が多い気がしました。
例)カルタゴ の象部隊を彷彿させるかのような複数のゾウの置物、クシュ文明の神殿に鎮座するアモンのような置物、ローマの神殿のようなオブジェ、ジビルチャルトゥンで神格として称えられる豹を思わせる毛皮などなど
バーバラ・ミネルヴァ
スミソニアン 博物館の学芸員 で、ダイアナの同僚。
優しく思いやりがあり、仕事においても優秀だが、本人は自身のことをドジでイケていない人間だと思っている。
暴漢から救ってくれたダイアナを見て、ドリームストーンに「ダイアナのようになりたい」と願うが徐々にバーバラの行動はエス カレートし、チータ ーへと変貌していく。
本来のバーバラ
《ネコ》
バーバラの周りには、常にネコ の要素が散りばめられており、彼女の変化を示すバロメータ ーとして機能しているようにも思えます。
ドリームストーンに願い事をする前後のバーバラを振り返りながら、これらがどういう意味を含んでいるのか考察してみます。
◇アトリビュート ・寓意の視点で見ると...
ネコ は怠惰、悪魔・魔女の使いなど悪い意味で捉えられる一方で、自由や神聖の象徴とも考えられる。相反する意味を背負った動物。
レオナルド・ダ・ヴィンチ 《猫のいる聖母子の素描》1478年~1481年 大英博物館 所蔵
当時は忌み嫌われていた猫だが、猫好きのダヴィ ンチが聖母子と猫を一緒に描いたことがきっかけで、聖なる動物として捉えらるようになったという説もある。
願い事をする前:
ネコ科の動物の標本やネコの要素に関連したものに囲まれるバーバラ
この時点のバーバラは、捕食者に狙われる弱者と見せかけて、本当の自分をさらけ出せない臆病な子猫 のように私の目には映りました。
バーバラが描く理想の姿=強く逞しく自由に生きたいという憧れ を、彼女を取り囲むかのように配置されたネコ科動物の標本や、レオパード柄 のヒールを履いたダイアナで表しているのではないでしょうか。
© Clay Enos / Warner Bros. / DC Comics, Inc.
本当に着たい服装をスカートで隠してることからも、バーバラは猫を被っているように見える
願い事をした後:
生きているような標本ではなく、骨だけになったネコ科動物の標本がよく映りこむようになり、同時に毛皮や動物のプリントを纏いだすバーバラ
◇アトリビュート ・寓意の視点で見ると...
骨⇒虚無、死
毛皮⇒力の象徴
これらはバーバラが狩る側 へと転向した合図であり、捕食者としての力を誇示する役割を担っているのではないでしょうか。
その一方で、彼女本来の良さ や人間らしさ が徐々に死に始めている印象を受けます。
© Clay Enos / Warner Bros. / DC Comics, Inc.
よっぽどなこだわりがない限り、真夏の7月にわざわざ毛皮を着ないのでは...?
《鏡》
ドリームストーンに願い事をして以降、鏡を見るバーバラの姿が何度か出てきます。
◇アトリビュート ・寓意の視点で見ると...
鏡は傲慢、真実を映し出す象徴
©Warner Bros. / DC Comics, Inc.
どことなく、『バットマン リターンズ』のセリーナを彷彿させるバーバラ
ドリームストーンに願い事をした後に「鏡」 というモチーフを登場させるのは、バーバラの外見的な変化に注目させるのはもちろんのこと、
バーバラの中にもともと眠っていた、大胆で奔放な一面が解放されたことや、外部的な要因で手に入れたパワーと自信を自分のものだと錯覚して増長する傲慢 さを映し出すアイテムのようにも思えます。
Wonder Woman #6 ©️DC comics, Inc.
コミックでは、初代チータ ーのプリシラ ・リッチがチータ ーに変身する際の重要なアイテムとして鏡が登場する。
ダイアナとの関係性
バーバラ/チータ ーはワンダーウーマン にとって宿敵 の立場でもあり、不思議な縁で結ばれた表裏一体 のような存在でもあります。
《女神の名》
偶然にもバーバラは、 ミネルヴァ というローマ神話 におけるアテナの別名 を名字に持っています。
これは、彼女がもう一人のダイアナ、あるいは対になる存在なのではないか?という 想像を膨らませる要素のひとつです。
更に面白いことに
一方のダイアナ(Diana) の名前の由来を遡ると、 ローマ神話 の月の女神ディアナ にたどり着きます。(ギリシャ 神話のアルテミスに該当)
ディアナは狩猟 を司り、化身がネコ であること* 、そして人間嫌いで気性が激しい性格から、ダイアナよりもヴィラン としてのバーバラ を表す名として相応しいと言えます。
* エジプトのバステト神がギリシャ ・ローマに移り、ディアナに変化したという説がある。
ジャン=マルク・ナティエ 『ディアナに扮した女性の肖像』1752年
クリーヴランド 美術館所蔵
高潔な神とされる傍ら、人間不信で残忍な側面もある女神ディアナ。
魔女に崇拝される存在とも考えられている。
互いが互いの名前を表すという不思議な関係にある二人には、何らかの宿運が介在しているように思えます。
ちなみに、原作者ウィリアム・マーストン教授の妻たちがワンダーウーマン のモデルとされています。
また、その宿敵であるチータ ーの着想も彼女らから得ていると思われます。
『マーストン教授の秘密』(2017年)
©Boxspring Entertainment, Stage 6 Films, Topple Productions.
ワンダーウーマン 原作者のマーストン教授の伝記映画
※写真左から
マーストン教授(ルーク・エヴァンス )
ワンダーウーマン のようなボンテージ姿のオリーヴ(ベラ・ヒースコート )
チータ ーを思わせるコートを着た妻エリザベス(レベッカ・ホール )
自ら決めた限界
セリフや振る舞いの端々から察するに、
本質を理解せぬまま、規範やステレオタイプ に抑え込むバーバラは、間違った認識でなんでも決めつけてしまう人だということが分かります。
例)ダイアナとの初対面時、宝石鑑定のシーン、ランチの様子など
その見当違いっぷり は、本来の愛すべき自分の長所を自らの弱点とみなし、自身を蔑ろにする原因でもあります。
© Clay Enos / Warner Bros. / DC Comics, Inc.
ドリームストーンに願い事をしなくても、彼女にしかない魅力やパワーがバーバラにはある。
ない物ねだりな性格が彼女の暴走のきっかけであるとも言える。
最初に「ダイアナのようになりたい」と願った時点のバーバラは、ダイアナと対等、もしくはそれ以上のパワーを持っていたかもしれません。
しかし、その後にマックスの力でチータ ーへと変貌を遂げたバーバラは、私個人の目には、とりたてて強化されたようには思えませんでした。
なぜなら、石の力で増幅した怒り と、計り知れない驚異(ワンダー)のパワー を「捕食者の頂点」という人間が想像し得る範囲内 に抑え込んでしまったように思えて、ここでも彼女の見当違い が足枷になった印象を受けたからです。
© Bruce Timm, Ty Templeton, DC Comics,Inc.
生きとし生けるものは、調和をとりながら互いを支えあって生きている、と考えるアマゾン族のダイアナからし てみれば、「捕食者の頂点」という概念は、人間が勝手に作り出した概念だと言えるのでは?
自分の問題や状況を顧みず、都合の悪いことから目を逸らすバーバラは、脆く不憫であり、『WW84』 の中では、良くも悪くも一番人間らしさを持ったキャラク ターだと思います。
もし、ダイアナが重要な局面で真実を拒んだらどうなっていただろうか?という疑問への答えをバーバラが体現していた気がします。
バーバラの最初の願い事が取り消されたかどうかは明かされておらず、もしかすると、強靭なパワーは彼女の中に残ったままかもしれないので今後の動向が気になります。
コミックでは、利害が一致すれば、チータ ーはダイアナに力を貸すこともあるので、いつか映画でも共闘してくれないものか…と願うばかりです。
…キャットウーマン 然り、やはりネコは気まぐれなのでしょうか。
アステリアと星
《アステリア》
希望と真実の象徴であり、ゴールドアーマーを着るに相応しい戦士であった。
人間によるアマゾン族の隷属解放のために戦い、同胞をセミ ッシラに逃がすべく、人間の世界にひとりとどまり、身を呈して追手を足止めした。
アステリアとは...
ギリシャ 神話・ローマ神話 に登場する平穏を愛する正義 の女神。
名前は、星のごとく輝くおんな ・流れ星 を意味する。
アステリアは、Justice(正義) の語源であるユースティティアと同一視される。
『ジャスティス・リーグ 』のロンドン中央刑事裁判所のシーン
©Warner Bros. / DC Comics, Inc.
ダイアナが乗っているのは、実はアステリア (ユースティティア)の像である。
アステリアという映画オリジナルキャラク ターを演じたリンダ・カーターは、元祖実写版ワンダーウーマン * と呼ぶにふさわしい俳優であり、彼女が主演を務めたテレビドラマシリーズは、当時人気を博していました。(*実写版ワンダーウーマン は彼女で 3人目ですが )
そして、幼少期のパティ・ジェンキンス 監督がスーパーヒーローに憧れるきっかけとなった人物でもあります。
©️Wonder woman / ABC, CBS / DC Comics, Inc.
1975年から1979年にかけて放送されたテレビドラマシリーズでワンダーウーマン を演じたリンダ・カーター
近年ではCWスーパーガール に大統領役で出演したり、『ワンダーウーマン 』 (2017年)公開時には宣伝CMにも登場していたため、映画本編にも登場するのではないか?と期待していました。(このときはあいにく実現しませんでしたが)
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今回ついに満を持して、リンダ・カーターが演じるに相応しいアステリア という役で登場したのは本当に感激でした。
アマゾン族をセミ ッシラに逃がす使命を果たしたアステリアはもしかすると、人間の世界でワンダーウーマン として平和の維持に努めていた(実質先代ワンダーウーマン ) と考えても面白いのではないでしょうか。
《星》
『WW84』 の本編は、赤い星型の風船が空に浮かんでいき、そのあとに空を飛ぶワンダーウーマン のカットに切り替わって幕を閉じます。
◇アトリビュート ・寓意の視点で見ると...
星は慈愛、人を導く象徴。古代では、空に輝く星は神だと考えられていた。
*星はワンダーウーマン シンボルでもある。
©Warner Bros. / DC Comics, Inc.
空に浮かんでいく風船を見上げるダイアナ。
前作の最後とは違い、彼女の表情はとても輝いている。
「星のごとく輝くおんな」 というアステリアの名を継ぐかのごとく、輝かしく宙に舞うダイアナは、世界を愛と真実と正義で大きく包み込む存在になろうと決心し、星のように 人間の歩む道を照らす希望の光へと進化した のでしょう。
おまけ:神の片鱗
《説法するおじさん》
マックスの暴走で、内戦状態に陥りそうなホワイトハウス 周辺のシーン。
自分の判断に迷い、憔悴するダイアナの目の前に、説法を説く おじさんが映る。
“「大患難」だ。終わりの日が来るぞ。見えるか己の罪深さ、己の強欲が。(『WW84』より引用)” という説法の言葉はまるで、おじさんを通して父ゼウスがダイアナに語りかけているようです。
《雷 》
トレバーと別れた後に、空の雲行きが怪しくなり、雷が光りだす。
◇アトリビュート ・寓意の視点で見ると...
雷はゼウスのシンボル。
コミックでは、ワンダーウーマン は雷を発生させる設定もある。
悲しみにくれている場合ではないぞ!と言わんばかりに絶妙なタイミングで、ダイアナを導くように落ちる雷は、父ゼウスの片鱗を感じられます。
Wonder Woman (2017) ©️Houston Sharp / Warner Bros. / DC Comics, Inc.
雷霆で軍神アレスを退けるゼウス
(ゼウスは、この戦いで息絶えたとされる)
まとめ
『WW84』で街を散策するダイアナが放った「すべてはアート」という言葉があります。
これは、美術品に対してはもちろん、劇中の何気ないもの、そして世の中すべてのことに当てはまるようにも思えます。
また、この言葉を鵜呑みにしたスティー ブがただのゴミ箱をまじまじと見つめる様子は、一見愛らしく少々滑稽です。
これは、表層や固定概念に縛られずに本質を捉えることや、世の中に美しさを見出そうとする真摯な人の姿を映し出しているようで、個人的には印象深いシーンです。
Wonder Woman 1984 ©️ Warner Bros. Entertainment Inc. / DC Comics, Inc
ゴミ箱を見つめるスティー ブ
(ロケ地である「ハーシュホーン博物館と彫刻の庭」は、リノベーションされることが決まっている為、この建物の姿を映像で観られるのは、この映画が最後だと思われる。)
『WW84』の感想
映画の締めくくりに、Lost and found という曲が流れます。
このタイトルのLost には、失う・負ける・迷う という意味があるので、何重にも意味が込められているのではないでしょうか。
タイトルをそのまま訳せば、失って見つける/落とし物(の預かり所)になります。
人生には何かを失ったり 、打ち負かされたり 、迷いそう になる局面が訪れることもあるでしょう。
一方で、その経験があるからこそ見えてくるものもあるのだと『WW84』 が一番伝えようとしているメッセージをこの曲が際立たせていたと思います。
『WW84』 は、現実の無常さも希望も同時に味わえる、なんともいえない感慨深さを与えてくれます。
どんなときでも、諦めない心・色んな事物に真摯に向き合い、美しさを見出す目を養って生きたいと思いました。
『ワンダーウーマン 』 に続き『WW84』 にも、ダイアナが他者からワンダーウーマン と呼ばれる描写はありません。
このワードは、特定の一人を指すだけでなく、ダイアナを支えた全ての人が冠するに値する名前であると考えます。
これは、現実でも言えることであり、ワンダーウーマン に憧れていた7歳の頃の自分を忘れず「ワンダーウーマン を作り上げた様々な人達に敬意と称賛を表現したい」 と挑んだ監督、作品作りに関わったすべての人、そして、この映画自体がワンダーウーマン だと私は思います。
©️ Clay Enos , Warner Bros. Entertainment Inc. / DC Comics, Inc
『WW84』撮影中の一コマ
左から、パティ・ジェンキンス 監督、ガル・ガドット 、ペドロ・パスカル 、クリステン・ウィグ
最後に、私が『WW84』 を観て思い浮かべた絵画作品を紹介してこの記事を終えたいと思います。
武装 した女神アテナ(ミネルヴァ)が悪徳を撃退する様子を描いた一枚
アンドレ ア・マンテーニャ『徳の勝利』1497年~1504年
ルーヴル美術館 所蔵
女神アテナ(ミネルヴァ) が、キューピッドや女神ディアナを味方につけて、肉体的な愛に固執 する「不徳」やミミズクの顔の天使が象徴する「欺瞞」、沼に集まる「無知」「貪欲」などを追い払っています。(空に浮かぶ3人は、「正義」「勇気」「節制」のアレゴリー とされます。)
雲の上から美徳が見守るなか、悪徳を追い払おうとする女神アテナ(ミネルヴァ)は、まるでゴールドアーマーを纏ったダイアナのようです。
この絵は謎だらけで解明されていない点が多いのですが、色々な解釈をすることが好きな自分としては、考える余白を持たせてくれているようで気に入っています。
前回に引き続き、今回も美術を絡めながらヒーロー映画を振り返ってみましたが
絵画も神話もコミックも、同じモチーフを、色んな人が伝え/描いていくことで、豊かな歴史を蓄えていく継承の芸術 なのだと改めて痛感しました。
<終>
長々とまとまりのない文章にお付き合い下さり有難うございました!
今後も気まぐれに気が向けば、記事を上げていこうと思います。